ESSAY TOP  

ナローポルシェや、M-HOUSEをとりまく色々な事柄を綴った不定期更新のエッセイです
第9話 ポルシェな人々 その7
ポルシェにまつわる様々な人々の、本人にとっては誠に真剣な、はたから見ている と実に楽しい愉快な生態をシリーズでお話ししましょう。

レストアしてもいいのは親父の形見だけ

先日こんな電話がありました。
ナローを貰いました。結構錆びているのでレストアをしたいのですがお願いできますでしょうか?と

いつも言っていることですが、クルマをレストアするということは簡単にいえば大きな事故をしたクルマを直すようなものだと。クルマ全体に渡って鈑金をして、ドアを外したり交換したり、フェンダーを外して切りついだりと出来上がってみると元のクルマと微妙に雰囲気、性格が変わってしまうのです。それを最小限に留めるには、実に細かな気使いと根気(オーナー、鈑金屋さん、SHOPすべてに)が要求され、さらにオリジナルに関する細部に渡る正確な知識が必要とされます。費用は実施する範囲によって異なりますが、普通考えられているより遥かに多くかかるものです。そして、ボディーがきれいになってくると、初めはお金がかかるのでやらないと決めていたところも、やりたくなる。天井、シート、カーペット、ドアの内張り、ダッシュボードからハンドル、メーターのO/H、いろいろなところのゴム類の交換、そしてフロントガラスのキズが気になり出す。さらに配線のチェックをしたら、途中から訳のわからない線が繋がれていて、その先が考えられないところに結線されている。スイッチを入れても何かが作動せずとんでもないパーツの不良が発見される。
そして、エンジンもO/Hをせざるを得なくなり、ミッションオイルを交換したら中から何か出てくる。それでトランスミッションも要O/Hとなってしまう。
そんなこんなをやっていくと、1000万円という数字も決して無縁なものとは思えなくなってくる。
クルマをただで貰ったからといってそこまでの覚悟がありますか?。
そんなレストア希望者に言っているのです、レストアしてもいいのは親父とのなつかしい思い出のある

『形見のポルシェだけ』

だと。