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ナローポルシェや、M-HOUSEをとりまく色々な事柄を綴った不定期更新のエッセイです
第101話 ここはどこ?私は誰?
2006年暮れの出来事その2

いろいろあってやっとですがオーディオ趣味を再開することにしました。もちろん アナログオーディオです。長らくしまい込んでおいた機器類を出してきました。さすがに今使うにはどうかなと思うものもありますが、GarrardのターンテーブルにSMEとOrtofonのダブルアームのプレーヤーなどは今でも人気があるようです。35 年くらい前に特注したもので、当時も仲間内ではちょっと自慢でした。
再開にあたって、リスニングルームの問題は依然として残っている(休止したのもそれが問題だった)ものの、これを機会に前から欲しいと思っていた、機器も買い足しました。その中の一台を受け取りに、あるオーディオショップを暮れに訪ねました。事前に電話で、うちはショールームのあるようなところではなくて修理工房 のような感じなので十分な対応が出来ませんが、それでよろしかったらお越しくださいといわれていました。それを承知で伺ったわけですが、ドアを開けてまず目に飛び込んできたのが、ELECTROVOICEの30Wが4個無造作に置かれて修理を待っている光景でした。ご存知の方も多いと思いますが、直径1m近いウーハーで4個まとめて見られることはまずないのではないでしょうか。部品の棚に目をやると、大量の古い(新品の)コンデンサー、当時ものの未使用真空管の山、いくつもの機器類が入ったままと思われる古い箱などが所狭しとあって、剣豪の気持ちに例えて言えば、お主出来るなといった感じでした。
部屋の一瞥が済んだ頃、奥の机から代表のCさんが出て来ました。お互い名刺交換を済ませて、私は、小さなポルシェショップ、それもナロー専門で、クルマがメーカーのラインオフした状態を最上と考えそれを実現、再現していることを手短に話しました。そしてここはM-HOUSEのようだとも話しました。受け取るアンプのことをちょっと話して、ここかなと感じたので思い切ってCさんに質問をしました。

私S
「もう何年も火を入れてないアンプがあるのですが、見ていただけますか?」
C代表
「いいですよ。ずっと使ってないアンプに無造作に電源を入れると大変なことになりますから。壊さなくてもいいところまで壊してしまうことになりますから」
私S
「でも沢山あるんですよ」
C代表
「それでも一台一台見なくてはダメです。だって、何年もエンジンかけてないのに何の点検もしないで、エンジンかけて回しますか?しないでしょ」
私S
「確かに」
C代表
「それと同じです」
私S
「アンプは球のプリアンプが2台、トランジスターが2台、メインアンプは球のステレオが2台、モノが2台です」
C代表
「お持ちの数は関係ありません。一台一台きちんと測定して、チェックしてダメな部品は交換しなくてはなりません」
私S
「部品を交換して、音が変わりませんか」
C代表
「もちろん変わりますよ。でも、壊れた音では何の意味もありませんから」
私S
「いや、うちでは部品を交換しても当時の性能はもちろんのこと、すべてがメーカーのラインオフの状態にしますが」
C代表
「うちでもそれは出来ます。ただ、当時の部品や同じメーカーが作った部品を使うのでかなり高くなります」
私S
「いくらぐらいを考えておけばいいでしょうか」
C代表
「球のプリアンプで真空管を別にして一台20万円からです。メインアンプはそれ程かかりません。一台3万から5万円です」
私S
「ということは、ざっと見ても7,80万円かかるということですね」
C代表
「他所は知りませんが、うちは部品を交換するにも、半田をきれいにとって、からげてある足をきちんと外して、それからもう一度新しい部品の足を元のように取り付けて半田付けします。そんなこと以外にも、ピンジャックの固定具合やその他いろんなところを一個一個診て行くのと正直やってみなくては何にもわかりませんから、このくらいはみていただかないと」
私S
「そうですか、わかりました金額のことはもう言いません(なんだかM-HOUSEみたいだな)」
C代表
「そういうことをやりますので、いっぺんに全部お持ちいただいても、ほかにお預かりしているものもあるので、すぐには出来ません。取り敢えず一台づつプリとメインをお持ちいただけますか。たぶん、MarantzとMcintoshでしょうから」
私S
「(誰かもこんなこといつも言っているよな)はい、MarantzとMcintoshとモノがDynacoのMarkIIIです]
C代表
「それはMarantz、7、8ですか?それからお持ちいただけますか」
私S
「わかりました、そこでお願いなのですが、今日いただいていくつもりでしたアンプお金はお支払いしていきますので、Marantzを持ってきたときにいただいて帰りますので、それまでおいて置いてくださいますか」
C代表
「それはかまいません」
私S
「それからひとつお聞きしたいのですが、最近のロシア製や中国製の真空管は、昔のメーカー品とどう違うのでしょうか」
C代表
「一言で言ってしまえば、作動が安定しないということです。うちでは使いません」
私S
「(なんだかますますM-HOUSEみたいだな)わかりました、年明けにお持ちします」
C代表
「お待ちしております」

といったやり取りが合って、帰ってきました。話をしていて、思わず錯覚してしまいそうでした。はじめはここはどこ?あなたは誰?状態で、まるで目の前にいるのが自分のように思えました。置いてある部品、雰囲気、代表の強気?な態度、もろもろ総合してやっと本物にたどり着いた気がしました。人によってはあの態度にちょっと不愉快になるかもしれませんが、本物オーラが出ていました。これを感じられない方が何と多いことか。


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