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第13話 祝『クラシック・ポルシェ 全図鑑』(ニ玄社刊)
『クラシック・ポルシェ 全図鑑』が7月26日にリリースされました。911部分の監修を私がさせていただきました。正直物足りないところも多いのですが、是非、皆様にも買っていただきたいと思います。本書のカバーのところに私のコメントが載っていますが、紙面の都合で大分短くなってしまいました。その原文を載せることで『クラシック・ポルシェ 全図鑑』(ニ玄社刊)発売をお祝いすると共に、私のナローポルシェ、オリジナルに対する思いをくみ取っていただけたら幸いです。
関口 充
いわゆるレストア車、それもその世界では多くの人が知っているという有名レストアラーの手によって仕上げられたクルマを間近で見た、もしくは所有しているという人は少ないと思います。しかし、そのようなクルマを多くの人が所有してみたないと思っているのではないでしょうか。新車が買えたような気がするし、何もかもが新しくて念願がかなったと思う人もいるでしょう。実はかくいう私もそのひとりだったのです。
私はチャンスがあって、有名レストアラーの手によるいわゆるフルレストア車を手にいれました。そんなクルマを所有できてしばらくの間は有頂天でしたが、しだいにある疑問が湧いてきました。これってメーカーが造ったのといっしょなのか、新車時は本当にこうだったのか・・・と。それは、乗り心地、フィーリングにはじまり、内装の材質、シート座面のかたさ、取付けボルトナットのかたち、果てはいろいろなホースを留めているバンドの数まで気になってきました。
そこで私は、どんな年式でもいいから低走行のオリジナルなクルマを買えるだけ買ってみました。そこから実にたくさんの事がわかってきました。先ほど上げた疑問はもちろんのこと、メーカー純正部品のつくりのよさ、丁寧さ、当時のオリジナルのパーツ、材質がつくり出す独特の雰囲気。そして、それらが積み重なって(組み立てられてというのが本当でしょうか)はじめて、ドアの締まる音や振動までオリジナルが実現されること知りました。同年式の同じグレードのレストア車とフルオリジナル車を比べて、同じようで実は大きく異なることに気が付いたのです。
こういう話しをすると、ナットは締まっていればいいし、内装は破れているよりきれいな方がいい、クルマがちゃんとしている事の方が大切だと言われてしまいます。オリジナルうんぬんより、レストアしてあってもちゃんとしたクルマであることの方が大事なのだと。
もちろん、クルマはきちんと整備されていることが第一ですし、オリジナルであることがすべてではありません。しかし、当時と同じ純正部品や程度のよいオリジナルな内装を持っているクルマが、造られたころの真の姿を今に伝えられることも冷徹な事実です。その造られたころの状態を伝える力をどのくらい残しているかが、今旧いクルマに乗る上での一番重要なポイントだと思います。
そのためには、何がオリジナルなのかを見分けられる事が実に大切です。本書がその眼力アップの一助になればと今回『911に関して』お手伝いをさせて頂きました。ただ監修を終えて、もっともっとお伝えしなければならないことがあるということと完全に満足のできるレベルにまで到達しなかったというのが実感です。近い将来に完全版が出版されることを切に希望しています。
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