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第134話 名物船長逝く
大阪三井客船の名物船長だった、弓場道義氏がお亡くなりになりました。
弓場船長は多くの青年の船、企業の研修船の船長として活躍されましたのでご存知の方もおられるかと思いご報告させて頂きました。
戦後三井商船に入られ、南米移民船「アルゼンチナ丸」や「ブラジル丸」の船長を勤められ、また、120話でお話しました私が1/100のモデルを作っていた貿易巡行見本市船「さくら丸」の船長として世界中の都市をまわられ、私が出会った「新さくら丸」の船長として数多くの青年、企業人に多大な影響を与えてきました。
船長の話の上手なことはあまりに有名で、そのことで記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。母親が息子を戦争に行かせないように行かないですむように寝ている船長の目を針で突こうとしたときのこと、戦争中、乗っていた輸送船がアメリカの潜水艦の魚雷攻撃を受けて沈没洋上を漂流した話、南米移民船での悲しい経験、あらしのなかエンジンが故障して舵の効かない船での転覆沈没の恐怖、貿易巡行見本市船で行った世界の港での出来事、それらのどれもが船長の船に乗った者を感動させました。私のように同じ話を何度も聞いた者でも、話の先がわかっていても毎回心動かされました。
弓場道義船長をご存知ない方には、今回は何?という感じかも知れませんが、ご報告させて頂きました。
享年83歳、心よりご冥福をお祈り致します。
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