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第180話 天皇皇后両陛下とニアミス
先日テレビで御成婚五十年の会見を見ながら急に思い出したことがありました。
もうかなり前、昭和61、2年のころだったと思いますが、手を伸ばせば触れる程近くでお二人を拝見したことがあります。
場所は軽井沢の旧軽ゴルフ場の横のいまでも細い道路です。私は山から下りてきてもう少しで鹿島の森のところに出る手前で、前が詰まって動けないでいました。夏の軽井沢だから、だれか政治家か偉い人が通るのだなあとゆるく考えて早く行かないかなあと思っていました。そうこうするうちに三、四台の車列がこちらの細い道に入ってきました。先頭とニ台目(があったかちょっと記憶が怪しい)の黒の警察車輌と思われるクルマの後に、黒のセンチュリーが続いてきました。何気なくパッと目を上げると、後ろの席の窓を開けた状態で、何と皇太子殿下と美智子妃殿下が乗っておられました。互いに手を伸ばせば(あり得ませんが)握手ができる距離でした。皇太子殿下はにこやかに周りをご覧になっていて、美智子妃はにこやかに、そして同時に周りに軽く会釈をされているように見えました。私は思わずぺこりと途中からさらに深く頭を下げていました。
まず、皇太子殿下と美智子妃殿下が通るなどとは全然思ってもいない上に、大物政治家が誰か見やろうくらいのつもりでしたから、頭を下げるなどとは全く予期していませんでした。それが辺りの空気が一変するくらいの不思議な力、あまりに高貴なというのか上品なというのか、全く無頓着な者にあわてて頭を下げさせる力がありました。この時程、高貴上品ということを感じたことはありません。
テレビでお二人を拝見していて、いま直にお会いしたら、あの不思議な力が辺りにいっぱいに溢れているんだろうなあなどと考えました。
ちなみに軽井沢でお二人に遭遇した時、私は片手にハンドル片手に焼きとうもろこを持って、思いっきりかじっているところでした。何と不敬で下品な者かと恥じ入ります。そんなことはいわなくてもわかってるといわれそうですが。
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