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ナローポルシェや、M-HOUSEをとりまく色々な事柄を綴った不定期更新のエッセイです
第192話 クリストフォーラス340号
 先日ポルシェの事情通N氏からこれを読んでみてくださいとクリストフォーラス340号の巻頭、編集部よりのページを開いて手渡されました。
 そこには、5千人を超える社員を前にした、Dr.ヴェンデリン・ヴィ−デキング、ポルシェ社前社長の退任挨拶の模様が載っていました。詳しく正確な内容はクリストフォーラス誌をご参照頂くとして、その冒頭だけ抜書きすると、

 『なんという光景でしょう。土砂降りの中、5千人を超える従業員が傘を手に立ち並び、ポルシェを辞する最高経営責任者に拍手で別れを告げました。白状しましょう。この瞬間、私の目にも涙が浮かんでいました。そこにいる誰もが知っていたのです。Dr.ヴェンデリン・ヴィ−デキングの辞任演説で、ひとつの時代が終わったということを。ポルシェが、ドイツで最も強力なイメージを持つブランドへと大きく成長した時代が幕を閉じたのです。』

この後に文章は続き、著者は編集長のKaren Scbulze氏です。

 事情通のN氏によると、クリストフォーラスにこのような記事が載ったことは今まで記憶にないというのです。私も、辞めざるを得ない(解任といってもいい?)状況でポルシェを去る前社長にいかに多くのポルシェ従業員が共感を抱いていたかがわかりました。そこで私は事情通のN氏に尋ねました。今回の一件の真相はどうだったのかと。
 N氏によると正確には自分にもわからない、ただ、ヴィ−デキングはある時点でポルシェがこのままの形態ではいずれ存続に何らかの問題が生ずると考えたのではないか。そこから導き出されたひとつの結論がVWを傘下におさめるということだったのではないか。またその考えを実行に移すだけの利益の源泉があった。それはカイエンの世界的な規模での爆発的なセールスがもたらしていた。そしてピエヒの存在がなければ辞任することはなかったのではないかと。
 私は話を聞き終えて、まさに自分が考えていたこととほぼ同じだと感じました。ポルシェのような特殊といってもいいスポーツカーメーカーが規模の大小に関わらず、今後も問題なく存続していくとは以前から思えませんでしたし、カイエンのもたらす利益もまた莫大だと思っていました。前にもエッセイのどこかで触れたと思いますが、同じ工場からトゥアレグとカイエンは生れます。V6同士で見て、販売価格を比較してください。ましてやエンジンの違いでしかないターボの価格を見ていただければそれがどれほど莫大か想像出来ると思います。

 何年かして、世界の主だった自動車雑誌でDr.ヴェンデリン・ヴィ−デキングに関して考察される時があれば、それを見てみるのも楽しみです。私個人としては、ポール・フレール氏の考えを拝見する機会が永遠になくなったことが 残念です。





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