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ナローポルシェや、M-HOUSEをとりまく色々な事柄を綴った不定期更新のエッセイです
第203話 紙芝居『しあわせの王子』 その2
豪邸の主の書斎

  豪邸の主は考え込んでいました。クルマ仲間に思いもよらぬことをいわれてしまったからです。主はいろいろなポルシェの本を出してきて、王子と比べてみました。友達にいわれた、ここはどうかあそこはどうかと指摘されたところを確認してみました。結果は残念ながら、すべていわれた通りオリジナルではありませんでした。
 主は自分の中で、しあわせの王子に対する気持ちが急激に冷めていくのがはっきりとわかりました。そうしたら、支払った高いけどしかたがなかったと思っていた金額が、急にとてつもなく高かったような気がしてきました。主は恐ろしいことを思いつきました。どうせ払った金額が回収できないなら、バラバラにして売却しようと。


休日のガレージ−1

 豪邸の主は、クルマ仲間に、しあわせの王子を再度さらにオリジナルに近づけるためにいらない部品をバラでお譲りするといって回りました。多くの友達が、えっ、そんなことするの、もったいないよと心配する人もいましたが、話を聞きつけた人もやってきました。
 はじめに取り外されたのは、ドアの内張りとリアのシートでした。オリジナルのビニールではないと指摘されたところでした。次に外されたのは、サイズがオリジナルと異なるハンドルでした。もうこの時点で、自ら走ることはできなくなりました。王子は、これから先に起こるであろう事態を考えると、身の毛がよだつ思いでした。
 取り外された部品を持ってかえる人はうれしそうでした。それらの部品が、どこかで生かされるのだと思うことがせめてもの救いでした。


休日のガレージ−2

 内装部品があらかた取り外されると、今度は外側の部品が取り外されることになりました。もうこの頃になると、オリジナルかそうでないかは問題ではありませんでした。
 ヘッドライトが取り外され、ガラスが外され、さらにトリムやデコレーションラバーがなくなっていきました。ドアのサッシが取り外された時はさすがに、豪邸の主も言葉が出ませんでした。ホイールとタイヤが外されて馬で支えられている姿は、哀れとしかいいようがありませんでした。
 ここまで来ると豪邸の主も、自分からはじめたこととはいいながら、少し心が痛みましたが、後戻りなどできるわけもなくいよいよエンジンとミッションを外すことになりました。


つづく・・・



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