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第204話 紙芝居『しあわせの王子』 その3
ガレージ作業
エンジンとミッションの買い手はまだついていませんでした。豪邸の主(あるじ)は、心臓部のエンジンとミッションは取り外しておいて、別売りしようと考えていました。
ガレージに豪邸の主(あるじ)の友達が集まりました。王子は、エンジンを引き出せる高さにまでさらにジャッキアップされました。専用のエンジンマウントがないのでゆっくりと作業が進められました。取り外されたエンジンはミッションとつながったまま、ガレージの隅に置かれました。豪邸の主(あるじ)は手伝ってくれた友達の帰ったガレージで、少し時間がかかってもこのエンジンミッションは高く売れるに違いないと思いました。そして、とうとうドンガラとなった王子の処分を考えはじめました。
中古部品屋さん
取り外して持ち運べる部品は、クルマ好きに個々に譲ることはできても、ボディーはそうはいきません。エンジンもない不動車は引き取りに来てもらわなくてはなりません。普通のクルマ好きには無理でした。そこで以前から知っていた中古部品屋さんに話をしました。
しばらくして中古部品屋さんがガレージにやってきました。王子を見て、たいしてうまみはないなと思いましたが、転売するあてがないわけでもありませんでした。そこで安ければと、思いっきり安い金額をいいました。それはもう、えっ、という安さでした。
豪邸の主(あるじ)は足元を見られたなと思ったので、もう少し高くならないかと粘りました。中古部品屋さんは仕方なくほんの少しだけ高くしました。主(あるじ)はやむを得ないと承諾しました。それでも、安い金額にかわりはありませんでした。
かすかな光
エンジンとミッションは依然として買い手はついていませんでした。ナローがバラバラにされて、部品がバラ売りされているという話はかなり広まっていました。あるクルマ屋さんにもそんな話が届いていました。
ある日、ナローを専門に扱っているというクルマ屋さん、M−HOUSEのS代表という人がガレージにやってきました。エンジンミッションの売り物があると聞いてやって来たのでした。S代表という人は、ガレージに入るなり王子をじっと見つめました。そして、いきなりエンジンミッションとボディー、その他残っているものすべてを譲ってくださいといったのです。ボディーはある中古部品屋さんにいくことが決まっているのでもうダメですと豪邸の主(あるじ)はいいました。S代表は、あきらめませんでした。その中古部品屋さんを教えてくださいと頼み込んで直接交渉をすることにしました。
つづく・・・
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