ESSAY TOP

ナローポルシェや、M-HOUSEをとりまく色々な事柄を綴った不定期更新のエッセイです
第205話 紙芝居『しあわせの王子』 その4
対決

 M−HOUSEのS代表は、その中古部品屋さんを紹介してもらいました。S代表は中古部品屋さんに出向いて行って、しあわせの王子を譲ってくれるように頼みました。はじめは断られましたが、S代表は譲りませんでした。そして、とうとう金額の話になりました。中古部品屋さんのいった金額は、豪邸の主(あるじ)と中古部品屋さんとの間で決めた金額の十倍以上高いものでした。さらに中古部品屋さんは、オリジナル至上主義のM−HOUSEさんがあれを直して売るのと聞いてきました。
 S代表は答えました。あのクルマは売りません。徹底的に直して自分で乗ります。人が欲しいといってくれるクルマはお譲りしますが、誰からもいらないといわれたクルマこそ何とかしてあげなくてはいけないと思っています。まあ、いつできあがるか全然あてはありませんけど。
 売ってもいいという感じはしましたが、中古部品屋さんは強気でした。


救出の瞬間

 中古部品屋さんはM−HOUSEのS代表に意地悪をしているようでした。もともとの、豪邸の主(あるじ)との間で決めた金額の倍くらいで売れれば十分と思っていたのに、それが今、当初の十倍以上の金額でした。
 M−HOUSEのS代表は悩んでいました。その時、しあわせの王子の姿が目に浮かびました。ヘッドライトのない、ガラスのない、モールのない何もない姿でした。きっと昔のように走りたいんだよなあ。S代表は決断しました。中古部品屋さんの意地悪な金額をそのまま承諾しました。しあわせの王子が救われることになった瞬間でした。


安住の地

 M−HOUSEのS代表は、しあわせの王子の仮の靴になるタイヤとホイールを持ってローダーで豪邸のガレージにやってきました。とうとう来ました、しあわせの王子がこのガレージから出られる日です。動けなくなってから数年以上が経っていました。王子はうれしくてうれしくてたまりませんでした。本当のことをいうとうれしさ半分、これからどうなるのだろうかと、不安半分でした。ローダーに載って少し高い位置から見た町の風景はほんとうに久しぶりでした。
 M−HOUSEについて、車庫の中にしまわれてやっと安心できました。そこには、ありとあらゆるナローポルシェの純正部品が山のようにあったからです。これらがまた取り付けてもらえるのだと思うと涙が出てきました。


つづく・・・



GO TO TOP ▲