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第216話 RSのひとりごとー1
ここだけは来たくなかった
あー、もう着いてしまうなあ。ここは来たくなかった。そのRSはつぶやきました。クルマはシャッターの少し開いているM−HOUSEの前にとまりました。運転してきた現在のオーナーは、クルマをおりてお店の中に入っていきました。
オーナーは何台かナローにも乗ったことのある、仲間内ではなかなかのエンスーで通っている人です。今日も、自分としては十分仕上がったと考えている私をM−HOUSEのS代表に見せに来たのです。表向きは、部品を見せてもらいたいという理由になっていましたが。
このオーナーが、私の日本に来てからの何人目のオーナーだったかを考えていました。5人くらいまでは確実に覚えていたのですが、その後はあまり意識もしなかったのです。よく思い出してみて、たぶん10人目くらいだと確認できました。どの人も自分がオーナーになるときは、やっとRSが手に入った死ぬまで絶対手放さないぞと思い、前オーナーに絶対大事にしますありがとうございましたといって私を引き取っていきました。しかし、しばらくすると他にほしいイタリアン旧車が現れたり、仲介のクルマ屋さんから売ってくれないかといわれたり、経営している自分の会社が調子悪くなったりと、何らかの事情が起こって私は転売されていきました。短いときは2ヶ月もありませんでした。
私は憂鬱でした。日本に来る前も来てからも、私にはいろいろなことが行なわれました。オリジナルのフロント6Jリア7Jのホイールは、もっと高年式のサイズ違いのものと交換され、オールペイントを一回されましたが完全な錆の除去は行われず、ちりあわせ面出しもほとんど行われず厚ぼったい姿になりました。
M−HOUSEに行くことを知って、私はS代表にどこを指摘されるかあらかじめ予想して、ショックに備えようと考えました。シュミレーションをしました、今朝のことです。
・・・・・来週に続く。
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