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ナローポルシェや、M-HOUSEをとりまく色々な事柄を綴った不定期更新のエッセイです
第225話 RSのひとりごとー8
東京池袋トヨタアムラックス

 クルマ好きの13人目のオーナーは、池袋に行ったついでにトヨタのショールーム、アムラックスによってみました。
 上から順に見終わると、地下に初代セリカGTが飾ってありました。きれいに仕上げられていて新車のようでした。13人目のオーナーは、昔初代セリカGTに新車から乗っていました。色も同じライトイエローでした。近くによって、じっくりと見ました。ドアが開いていて中が見えました。シートがきれいに張り替えられていましたが、カタログに2000GTと同じ素材だと誇らし気に書かれていたセンター部のビニール素材が、全く関係のないものだったことに、まずガッカリしました。次にGTだけにあった、国産初といわれた成型天井を見ました。何とそれは成型天井ではなく、GT以下のモデルと同じ普通の吊り天井でした。ボディーも色こそ同じでしたが、肌合いといいますか、透明感といいますか、全体の感じが納車された日のあのものとは違っていました。初めての新車、何十年経ってもあの感じは覚えていました。
 13人目のオーナーは、かなりの時間そこにいました。初代セリカを見つけたとき、トヨタがレストアした『あの新車のセリカ』の再来を期待しました。作ったトヨタがレストアしたのですから。しかし、目の前にあるセリカは新車のようにきれいではありましたが、『あの新車のセリカ』とは全く違ったものでした。新車のセリカを知らない人には何の違和感も不満もないかも知れませんが、新車のオーナーだった自分には全く納得がいきませんでした。実際の作業を誰がしたにしろ、トヨタがこれを由としていることに憤りすら感じていました。トヨタ博物館に展示することを前提にレストアするということは、そのクルマを作ったメーカーとして自信を持って復元することだと考えていました。絶版部品もそのために製作すると思っていました。レストアとは辞書を引くと復元と書いてあるが、それは新車時の再現、復元ではないことを悟りました。完璧な新車の再現、それは町のレストアショップだから出来ないのではなく、そのクルマを作ったメーカーであっても新車時を再現、復元するのは困難なことなのだと。
 二台のナローに多額の費用をかけてきた自分は、あんなものでしかたがなかった、思っている通りになんかならないのだと、複雑な気持ちで帰路につきました。
              ・・・・・来週に続く。



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