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第23話 ポルシェな人々 その15
ポルシェにまつわる様々な人々の、本人にとっては誠に真剣な、はたから見ていると実に楽しい愉快な生態をシリーズでお話ししましょう。
ポルシェのために免許をとった男-その1
今回登場のFさんは、ナローポルシェに乗るためにはじめて普通免許を取得された方です。二輪が大好きな方でいままでは四輪の免許を持っておられませんでした。免許をお持ちでなかったことからもわかる通り四輪には一切興味のないFさんでしたが、昔からナローには憧れていたといいます。ルーフの後端からリアフェンダーにかけてのなだらかな曲線が何ともたまらなく好きですとおっしゃっています。だから、RSのようにそこに何かついているのは嫌です、RSでもないのにダックテイルをつけている人の気が知れないという美意識をお持ちの方です。
そんなFさんが、インターネットでナローを見つけられて購入輸入されました。購入相手からM-HOUSEを紹介され、うちでクルマを整備されることになりました。ここから先は、ご本人の了解を得てのことですが、インターネットでクルマを買うということがどういうことかをお話ししたいと思います。
ESSAY第2話でもお話しましたが、クルマは写真で見るとすごく良く見えるものです。それは、インターネットの画面上でも全く同じです。さらに画像の解像度がナマ写真より遥かに劣るので真の姿を掴みにくいといえます。画像で見えていても正確なことがわからないところ、画像にない気になるところといった重要な情報に気がつける方はまだいい方ですが、仮にそのことを売り主に聞いても、良くわからない、素人なので詳しいことを聞かれても困る、基本的に現状販売なのでなどとはぐらかされてしまっては判断のしようがありません。現物を目の前にしていれば、詳しいことはわからなくても見ることで、推測できる判断できることがありますが、写真、画像だけではかなり限界があります。そこで、インターネットでクルマを買おうと思った時の注意点をあげてみましょう。
1、現車確認の出来ないクルマはパスする(遠方で自分が行けない場合も含む)。特に海外サイトのクルマは趣味のクルマ好きには危険が多すぎます。
2、気になる質問は気後れせず全部質問する。
3、相手の答え方に注意を良く払う。誠実か否か、クルマに愛情のある人か否か、答えが的確か否か、などなど。
4、お金の話は大事ですが、クルマそっちのけでお金の話をする人はどうでしょう。(売り主買い主共)
5、クルマの売り買いは万国共通です。皆良いことをのみを相手に話し、そして掘り出し物はないと思ってください。
当たり前過ぎる話しですが、この5つすら忘れてしまう人が多いのです。そんな人たちにどうしてそうなったのかを聞くと、
a、少し変だと思ったけど、ナローは数が少ないのでこんなものかと納得した。
b、売り主は物腰が柔らかくて、丁寧だったので変だとか嫌な人だとかいう気がしなかった。
c、初めのうち2〜3質問したら、後の質問をしても同じような答えが帰ってくるような気がしてそれ以上質問しても意味が無いように思えた。
d、話を聞いているうちに、多少のことはしょうがないと思った。
e、金額を考えたら、やむを得ないし、こんなもんだと思った。
などの答えが帰ってきました。
Fさんは日本のオークションサイトでクルマを見つけられました。クルマを出品していたのはアメリカ在住の日本人でした。コンピューター関係のお仕事のFさんは話しのやり取りに問題は感じませんでした。クルマはアメリカにあったので現車を見ることは出来ませんでした。ダメを押すために、売り主の日本の実家を聞いて電話をしてみました。そこで、電話に出られたお母さまは大変物腰の柔らかい丁寧な品の良い方との印象を受けて安心しました。そして、先程のa〜eの答えにはすべて思い当たるともいわれれました。そのような過程を経て憧れのナローは日本に到着しました。
うちでクルマと対面した時のことをFさんは、思った通りいいクルマだと思ったそうです。日本に帰ってきていた売り主の方と3人で見たのですが、ただ、私がクルマについてあまり話しをせず、いいクルマですねとひとことも言わなかったのが気になったそうです。今回のナローの購入で、Fさんは考えていたのとふたつの点で、大きな誤算があったといいます。それはナンバーが付いて乗り出せるようになるまでの整備の時間が想像を遥かに超えたことと整備代に絶句したことだそうです。
>>ポルシェのために免許をとった男-その2 に続く
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