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ナローポルシェや、M-HOUSEをとりまく色々な事柄を綴った不定期更新のエッセイです
第267話 昭和40年代後半の思いで−3
トキワ気化器 その3

 ソレックスやウエバーを徹底的にいじくりまわした方も多いと思います。今日はそんな話題です。
 トキワさんはソレックスの代理店だったので、今日はソレックスの用語を使います。ウエバーとは若干違います。例えばソレックスではジェットブロック、ウエバーではエマルジョンチューブといった具合ですが、見当はつくと思いますのでよろしくお願いいたします。
 先日ジェット類が入ったプラスチックのケースを出してみました。私が乗っていたのは国産4気筒だったので、みな4個づつ規則正しく順番に並んでいました。それは商売が出来るほどのジェットやベンチュリーが入っていました。エアージェット、メインジェット、アウターベンチュリー、インナーベンチュリー、ポンプジェット、アイドリングジェット、ジェットブロック、ブリードパイプなどなど。エアーやメインは番手も上から下まで5番10番刻み、ベンチュリーも40用と44用の両方。インナーベンチューもシングルやらダブルやら、ポンプジェットやアイドリングジェットも多数。さらにポンプジェットジェットの下に入る小さなアルミのワッシャーやら専用ドライバーなどよくもまあといった感じでした。
 トキワの社長さんに教えてもらいながら、買っていったらこんなになってしまいましたということですが、クルマがノーマルのときから、徹底的にジェットのセッティングをやりました。メインだけをノーマルのところから上から下まで5番ずつ入れ変えてみてたり、エアーで同じことをしてみたり、メインとエアーの差を同じにした下から上まで組み合わせをつくって端から入れ替えてみる、それらにアイドリングジェット、ポンプジェットを組み合わせ、さらにはアウターべンチュリーを大きくしたり小さくしたり、インナーベンチュリーのシングルとダブルの低回転域でのトルクの感の差、高回転域でのフケ具合はどうだとか、レース用のブリードパイプを使うとどんな感じになるかなどなど、今になってみると意味のないことも多かったと思いますが、まあやったという感じはありました。
 いろいろやってみた結果の結論を簡単に言うと、ドンぴしゃりの解を見つけるのは実に大変、時間がかかる。メーカーの標準は、中庸ではあるがひとつの解であり意味はある。けれども、もう少し面白い組み合わせも確実にある。濃くする、デカくするのは一見速くなる気がするが、実は弊害が多い。特にただキャブを大きくするのは全然使いにくくなるということ(40から44に単純に変えてみて)と、高回転域だけ極端にフケるようになったりする(下は全くダメ)。
 話はちょっとそれますが、メカポンが調子悪いのでキャブにしたいとか、2.8のピストンを入れたいのでウェバーの46はないかとかの電話が最近はあまりこなくなりましたが、以前はこんなのもありました。ノーマルのナローはメチャクチャ遅いので、2.9にしてカムを加工して46をぶち込んでスープラだかGT−Rに勝つんだとかで、ウエバーの46とマニホールドを売ってほしいというのが。
 こういった電話を受けるたびに、セッティングを出すのが大変ですよ。現在ノーマルなら、費用はかかってもMFIをOHした方がいいんじゃないですか早道じゃないですかと。キャブは大きすぎると弊害が多いですよ。などなど。セッティングの大変さはどなたにもご理解いただけませんでした。逆に売る気はないのかと叱られました。
 まあ、やってみないとわからない領域のことですから、いまの方々にはキャブのジェットセッティングをする機会なんて、ご自分にも周りにもないでしょうから仕方ないとも言えますが、キャブ転換は実に大変です。
 当時のトキワさんには、ボクのようなのがいっぱい来ていて楽しかったです。
 来週は、そんな仲間かHKSのH氏のことを振り返ってみます。




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