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第301話 ポルシェレストアのキモー10
M-HOUSEは一台のクルマに何をするのか?
前回の300話を読まれた方から、この73Tには何をしてあるのか、OH以外に何をやり残しているのか詳しく知りたいとお問い合わせがありました。そこで、ポルシェレストアのキモの一つとして、詳しく書き出してみました。
まずこのダルメシアン73Tはアメリカから来ましたが、いわゆるミツワものでいうところの、911TDeluxeです。このTデラ(私の世代はこう呼んでいました)は簡単にいうと、911SのエンジンだけがT仕様の911です。
Sキャリパー、前後スタビ、コニショック、完全5連メーター(Tは左2つのコンビメーターが簡略化されている)、革巻きステアリング、ベロアカーペット、フロントSバンパー、 前後バンパーデコ、サイドデコ、ティンティッドガラス(国によってはSでもクリアーあり)、6JアロイホイールがTに装着されています。だから、簡単にいうと911SのエンジンだけがT仕様の911なのです。
もう一点、どうして仕様の話から入ったかというと、エンブレム以外本当のS仕様にするには、Tに部品を追加したり、交換したりとそこから始めなくてはならず、金額と手間がかなり余分にかかるということです。Tデラはそこが近道できます。
さて、この73Tに実施したことを箇条書きにしてみます。
- 元色で全塗装
- 前後ガラス脱着
- フロントオーバーライダー取り外し
- バンパーデコレーションラバー交換
- リアオーバーライダー、メッキタイプ(ラバー付)に交換
- サイドデコレーション及びラバー交換(程度悪かったため)
- フロントフードシール交換
- リアエンジンフードエンドシール交換
- 前後ウインドーメッキモール交換
- 前後ウインカーレンズ(いわゆるヨーロッパ仕様)交換
- フロントウインカーユニット(いわゆるヨーロッパ仕様)交換
- リアウインカーユニット内サイドリフレクター追加
- フォグライト118の反射鏡再メッキ
- フォグライト118のレンズ交換(フォグからドライビングへ)
- ホーングリル交換
- タイヤ(ミシュラン185/70VR15)新品装着
- ダッシュボード脱着修理
- ハンドル革巻き直し
- メーター脱着、書き換え(℃、km、kg)及び清掃
- 左右シート脱着清掃給油
- ペダルボックス脱着ブッシュ交換
- サンバイザー脱着
- ルームミラー脱着接着シール交換
- 左右ドアパネル脱着
- 左右ドアポケット脱着、付け直し
- シフト、リンケージブッシュ交換
- リアダッシュ脱着
- シートベルト脱着(受け側及びリアの巻き取り部)
- 受け側『PRESS』のシール交換
- 前後キャリパーOH
- 前後ブレーキホース交換及びブレーキフリュード交換
- マスターシリンダーOH
- 前後ローター交換
- 前後パッド交換
- 前後ショックビルシュタイン(Mハウススペシャルレート)に交換(フロントはストラットケースごと)
- 前後スタビブッシュ交換
- 前後サスペンションブッシュ全交換
- 4輪アライメント調整
- ハンドル位置調整
- シフト位置調整
- フロントフード内ワイヤーハーネス取り付け直し
- フロントフード内ワイヤーハーネス修理
- リアエンジンルーム内、電装品脱着、ハーネス補修
- エンジン調整(タペット、MFI、スロー、タイミング、バランスetc)
- プラグ交換、各フィルター(フューエル、エアー、オイル)交換
- エンジン、ミッションオイル交換
- フューエルホース全交換
- ヒートエクスチェンジャー、マフラー脱着塗装
- フードペニューマ交換
- サイドブレーキ、アクセル全開、フードリンケージその他調整
- ファンベルト、MFIベルト交換
これで半分くらいですが、キリがないのでこのあたりで一旦区切り、次に残っているものをあげてみます。
- エンジンOH(MFI、ピストンシリンダー、バタフライ等フルコース)
- ミッションOH
- ヘッドライトレンズ交換
- ワイパーアーム、ブレード交換
- Sエンジン化ならタコメーターの書き換えレッド7200rpm
- ラジオの機能チェック、FM受信帯下げ
あと、細かい調整です。
299話でいいクルマだったので購入したとあったのに、こんなにたくさん手を入れなくてはいけないのかという疑問をお持ちの方もいると思います。
M-HOUSEでは、すべてのクルマに同じ、徹底的に見ます。実際、40年以上たったクルマは、手をつけないで済むことはないと考えます。
『6、ラジオの機能チェック、FM受信帯下げ』を例に上げると、このクルマはオリジナルがそのままついているので、機能チェック、必要なら修理とFM受信帯下げをすれば済みますが、後年1DINタイプのものに交換されている場合などは、気が遠くなるほど大変です。生産時データから装着されていたオリジナルラジオを割り出し、そのラジオをまず用意する。次にこのラジオの修理、周波数受信帯下げをする。普通単体で探したラジオにはついていない、フィッティングキットを用意し、1DINのためになくなってしまっているダッシュのビニールレザーを用意する。ラジオの左右ビニールレザーと違和感のないものであることが重要です。もしこの73Tがそうであったら、タンのエレファントハイドを見つけるのは相当厳しいです。そういったものをひとつひとつ用意して、違和感のないように慎重に取り付けます。さらに、アンテナも問題あがあればメッキのものに交換します。
とまあ、M-HOUSEがめざす工場を出たときの姿に戻すのは根気とお金、気の遠くなることの積み重ねです。
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