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ナローポルシェや、M-HOUSEをとりまく色々な事柄を綴った不定期更新のエッセイです
第302話 ピニンファリーナ氏死去
 先日セルジオ・ピニンファリーナ氏の死去が報じられました。息子を交通事故で失ってから約4年後のことでした。創始者ジョバンニ・バチスタ・ピニンファリーナ(ファリーナ)氏が亡くなって50年近くグループを引っ張ってきた氏の訃報でした。詳細は皆さん方にお調べいただくとして、久しぶりに古いピニンファリーナ作品が気になって1963年10月号のCG(通算19号)を出してみました。
 ポルシェとの関係はないと思っておりましたが、1960年発表のコーヴェアが目にとまりました。コーヴェアはVWのアメリカ市場での成功を見たGMが、シボレーブランドで出した空冷水平対向6気筒のリアエンジン車です。
 まず356に影響を受けていると感じましたが、それよりも、このピニンファリーナ作品が911のプロトタイプに影響を与えているのではと思えたことです。
 さて、この1963年10月号のCGで面白いなと思った記事、広告がいくつかありました。記事では、ホンダS500の本田荒川テストコースでのインプレッション、フランクフルトショーでのタイプ901の発表、356C発売の三和の広告、310ブルーバードの輸出の写真を使った量産日本一の日産の広告等です。
 S500は、現在の目から見ても十分魅力的でしたが、チェーンドライブのクルマというのはどういう感じなのか(デフがないとういこと)、一度は乗って見たいと思いました。
 現在から見れば63年のフランクフルトショーのことは語りつくされていますが、CGの記事でおやっと思ったことは、901(この時は)はカレラ2(356)のような高性能なものを目指しているのではなく、機能、快適性を実現するものという記述でした。最初期911の性能は356カレラ2と同じで、73RSと後年の3.2カレラもほぼ同じ性能であり、より運転しやすい中で同じ性能を実現しているわけですが、情報不足もあってそう捉えられないのだと感じました。雑誌記事というよりマニアの視線で書かれていたとも思いました。
 三和の356の広告は、Bとの比較が表になっていて面白かったです。現在見るより356Cが魅力的に見える写真(実際はB?の写真だと思われます)でした。
 日産の広告は、310ブルーバードが貨物船に積み込まれる風景で、車台のようなものに載せて四隅のタイヤにロープをかけて、一台一台釣り上げて積み込んでいく様子ですが、時代を感じさせるなというのと、積み込み積み下ろしに時間がかかるなと思いました。自走して積み込んでいく自動車専用船は何年頃からかなあと、70年台になってからかなあと思いました。
 310ブルーバードの後継モデル410はピニンファリーナデザインであることは周知の事実でしたが、日産が公式に認めたということはなかったと記憶しています。マイナーチェンジ前のオリジナルは、尻下がりで特に不評でした。同じピニンファリーナデザインでもプジョーのような良さが感じられなかったのは確かです。原因はピニンファリーナのオリジナルを日産がいじりすぎたのと日本の小型車規格がオリジナルデザインに合っていなかったことの両方があったと思いました。
 ピニンファリーナもクルマ(ボディー、アセンブリー)の製造をやめるとかで、カロッツェリアを取り巻く環境、もしくは自動車業界全体が大きく変化しつつあると感じました。



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