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ナローポルシェや、M-HOUSEをとりまく色々な事柄を綴った不定期更新のエッセイです
第311話 普通のことだから
お褒めのことば

 だいぶ前ですが、自動車の世界で著名なカメラマンの方から言われたことがあります。
 M-HOUSEの二台のナローを前にして、Sさん、どちらがよりいいクルマですか?。聞かれて左の方ですと言うと、僕には同じに見える。どこが違うのか、違いがわからないと。
 私はこう答えました。手の入り方の違いです。右の方がより手がかかっていますから、その分左の方がいいですと。その方は、僕には全く同じに見えるけど?。やっぱり違いがわからないと言っていました。
 その時私は、いろいろなクルマをたくさん数え切れないほど見られてきただろうに、私が手を入れたところに気がつかないのかなあと思いながらも、あまり気にも留めずにいました。私の普段の感覚では、手のかかり具合でより手のかからなかった方がいいクルマというのがあります。
 それからずっとたったあとで、この出来事をある建築関係の方に話しました。するとSさん凄いじゃない、プロの自動車カメラマンも見抜けなかったわけだからとえらく興奮して言われました。えっと聞くと、だってオリジナルとSさんがあとから手を入れたところが同じだったってことでしょ。それって凄いことでしょう。あらゆる種類のクルマをたくさん見てきたプロの目をあざむくほど完璧にオリジナル再現ができていたって事でしょって言われました。
 実はそんな風に考えたことがありませんでした。やり方そのものはいつもやっていることで普通だと思っていましたし、あとから手を入れたところはどうしてもわかってしまうものと考えていましたから。
 このことがあってカメラマン氏とのことを思い出すと、あれは最上級の褒めことばだったんだとあらためて気がつきました。







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