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ナローポルシェや、M-HOUSEをとりまく色々な事柄を綴った不定期更新のエッセイです
第314話 民意ってベスト?
考えさせられたある事例

 いよいよ衆議院選挙が始まりました。テレビは連日各党公約はなんだ、違いはなんだ、我々はどこに投票すればいいのか、12党討論だ、と騒々しいです。これらの番組を見てマスコミは、私たちの民意は何か、それに一致する政党はどこかということに主眼を置いて報道しているように思えます。
 ここで考えてみたいことは、私たちが理想とする政治家、政党、政権というものが実現されるのかということです。多くの方は、志を持って世のため人のために行動するリーダーシップのある人で、笑顔がさわやかで理知的で温厚な人、スキャンダルなどに無縁でお金にきれいな人、欲をいえばイケメンか美人な人がいいと思っています。自動車や家電、洋服のように、自分の好みにピッタリもしくはほぼ希望通りの政治家、政党、政権というものが存在する実現する(出来る)と思っているように見えます。ちょっと冷静に考えればそんな人は存在しないのは誰でもわかるのに、常にそういう人を、そういう人の集団党を、そういう人で構成された政権を求めています。こういうことをいうと、あるべき理想を掲げないと実現できないでしょうという人がいます。
 でも考えてください、解散前にいわゆる党利党略の実現に奔走していた、自らの立場(議員)の保身が見え見えの方たちがまた立候補してくるのです。理想の実現なんてあり得ないのです。自民党の安倍総裁ではありませんが、本当に民主党の3年半はひどかったです。仮に今度民主党以外の政権が出来ても、この期間のことすべての損失は取り戻すのに数十年かかるものもあると思います。
 さて、東京の私鉄で京王線というのがあります。新宿と高尾山ともう一本多摩センター(多摩ニュータウン)経由で八王子の手前橋本まで結んでいる線のある鉄道です。この京王線の一部が地下トンネル化され、地上部分(かつて走っていたところ)の跡地をどうするのかというのが以前から論議されています。市がアンケートを実施すると遊歩道にという答えが圧倒的に多いといいます。商工業者の人たちの中には、一方通行の道路として整備して、その逆の一方通行の道路として旧甲州街道を歩道の広い快適な買い物居住空間にしようと考えています。現在の旧甲州街道は、双方向で歩道も狭く安全快適とはいえない状況です。また、線路沿いの居住者は本音では道路にして欲しいと考えています。線路側が広い道路になれば大きな建物が建築可能となり資産価値が上がると考えているようです。どちらにしても道路は少数派です。
 この場合、どの民意が実現されるべきでしょうか。住民投票を実施すれば遊歩道でしょう。しかし、この市の何十年後かを考えてみてください。経済的成果、市の発展、住民の安全(交通や災害時の)などを総合的に考えたら道路だと思います。負のイメージが多い道路という選択はなかなか、たぶん採用はされないでしょうけれども。
 ある時点での最大多数の意見が、必ずしもベストな選択とは限らないことの方が多いと感じます。選挙で選ばれるべき政治家は、未来を考えた果敢な選択のできる人だと考えます。有権者一人ひとりが、自分がこの国の国王元首になったつもりで、国家運営を任せられる宰相を任命するつもりで投票する。皆がこういった意識になってはじめて理想の世の中に近づくのだと考えます。これが実現されない悩みは、民主政治発祥の古代ギリシャから続いているのですが。



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