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ナローポルシェや、M-HOUSEをとりまく色々な事柄を綴った不定期更新のエッセイです
第325話 イギリスのクルマ番組
クラシックカーディーラーズ(原題WHEELER DEALERS)

 先日何気なくテレビを見ていたら、MXTV(Discovery channel)でクラシックカーディーラーズというイギリスの車レストアの番組をやっていました。そこで取り上げられていたのが914だったので思わず見てしまいました。
 内容は他の回を見ていただくのが一番早いと思いますが簡単に説明すると、番組ホストが中古車を見つけ出して買い付けてレストア(個人的には修理にしか思えませんでしたが)を実施して、車原価+レストア費用+利益の価格で販売するというものです。
 もう少し詳しくお話すると、ネットや知り合いを通してレストアをしていない程度の良いもの、購入価格がレストア後に販売しても利益の出るものといった条件の車探しから始まり、購入交渉、修理レストアの達人?による機械部分から内装外装にいたる修復過程、完成後の状態、再販売までを順追って見せるというものです。
 まあ車レストア業者のようなことをしているわけですが、クルマ好きがやりたいこと、まあプラモデルを頼まれて作って、お金をもらうようなノリといったらわかり易いかもしれません。
 しかし、あまりにたくさんのエッというところ、ツッコミどころが満載だったのでエッセイに取り上げたというのが本当のところです。
 まず初めて車に対面したシーンで、10年も納屋に放置されていた914のボディーカバーをどけたらフロント左右のフェンダーが磨いたように綺麗だったこと、そんなわけないでしょうと思いましたが、まあバッテリーを交換しておいたということだったのでフェンダーだけ埃を払っておいたのですといわれればそうなのですが、やはり仕込んでるなと思いました。
 さらにいきなりエンジンをかけました。数秒のクランキングで初爆があり、そんなわけは絶対ないのですが、かかりそうになるのはどうでしょう。そしてこれは水平対向のエンジンでは絶対にやってはいけないことです。なぜ?って、長期間放置されたエンジンはオイルが燃焼室に入り込んでいることがあります(直列やV型エンジンはオイルが下部に集まります)。そこでクランキングしたらどうなるか?、圧縮過程にあるシリンダーが混入オイルのためピストンが突き当たり動かなくなります。コンロッドはじめ各部に大きなダメージを与えますからプロは絶対にしません。
 そしてその後すぐに走り出しました。いくら私有地内といえどもありえないことです。まずクラッチが張り付いていてギアが入らない場合が多いですが、仮にクラッチが切れたとしても普通はローターとパッドが、もしくはサイドブレーキが固着して動かないことも多く、もしくは全くブレーキが効かない場合も十分考えられます。長期放置の車は、いきなり走っては絶対ダメです。いや走れないです。
 それら以外も、エンジンは修理箇所の少なさ、室内レストアの簡単さ、ミッションやブレーキに手をつけたシーンが皆無、などなどそれなのにすべてが2週間程度で終了すること、変なところ満載です。
 古い車、一定期間以上不動だった車は、オリジナル復元といった高度なレストア以前に、機械部分を安全の見地からしっかり修理しなくてはダメだということです。またそれだけでもかなりの費用と時間がかかることも理解してもらいたいです。
 このクラシックカーディーラーズ(原題WHEELER DEALERS)は楽しく見れば、見終わってそれでおしまいです。
 しかし真面目に申し上げて、クルマ好きならしてはいけないこと、ダメな例だと思って見てもらえたらそれなりに意味がある番組だと思いました。



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