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ナローポルシェや、M-HOUSEをとりまく色々な事柄を綴った不定期更新のエッセイです
第33話 離島の持つ不思議な力
 最近はポルシェ絡みでない旅行をすることはまず無いのですが、ちょっと時間が出来たので合間を利用して沖縄の座間味島に行ってきました。知人が送ってくれた座間味島の年賀状を見て前から一度は行ってみなければと思っていたのと、クジラが見られるかもしれないと思い立って、たったの一泊でしたが行ってきました。

 那覇の泊港から村営のフェリーか高速船で行くのですが、私は飛行機の都合から行きはフェリー、帰りは高速船の組み合わせになりました。行きの2時間は朝一の飛行機に乗るために睡眠不足だったので、途中の阿嘉に着くまですっかり眠っていました。接岸の時外に出て見たら、あまりの海のきれいさ、風の心地よさにいいところだなあと体の方が勝手に体調のモードを切替えていく感じがしました。
 阿嘉からそう遠くない座間味港もまったく同じきれいさでした。座間味島の第一印象は意外と大規模な感じでした。人口1000人位だということは村のHPを見て知っていたのですが、私のイメージしていたのはテレビドラマの「ドクターコトー診療所」のような人の少ない港を想像していたので、意外と賑やかだなというものでした。それも船が着いた時だけだと後で気がつきましたが。
 港のそばの民宿?ペンションに荷物を置いて、自転車を借りて早速島めぐりをはじめました。ペンションと自転車屋さんで島の地図をもらい、一枚はなくさないようにウエストポーチの中に、もう一枚をポケットに入れて出発しました。役場と学校の横を通って行くとさっそく上り坂になり、自転車を降りて押していると島の人が原付で追い抜いていきました。一瞬原付にすればよかったかなと思ったのですが、いやいや自分の力?体力を信じていこうと思い直しました。日頃運動不足の体には結構こたえましたが、鯨の見えるというポイント、美しいとしかいいようのないビーチなどなど登りと下りを繰り返しながら島内をめぐるうちにあることに気付いた、というよりあることが確信に変わりました。ここには人間力を回復させるものがあると。
 人間力って何のこと?って、いう方もおられると思いますので説明します。一言でいうと生きていく力のことです。人は毎日生きている、生活していけている状態を普通は意識していません。しかし、仕事で大きなミスをしたり、失恋したりすると滅入ったり、時には自殺すら考えます。こういう時の人は、意識するしないに関わらず人間力、生きていく力が低下していると私は考えています。この人間力は、日々の生活でも知らず知らずのうちに低下しています。人は軽微な低下を回復するために、気分転換するとか気分をリフレッシュするといってお酒を飲んだり、軽い運動をしたりするのです。

 航空会社の機内誌や旅行誌を見ていると、主に女の人が多いように思いますが、沖縄にハマったという読者の投稿や記事をよく見かけます。もう沖縄の○○島に通いはじめて三十数回になりますとか、年二回は沖縄の××島にいくことが習慣になってしまいましたとか、離島の虜になった人の話が数多く載っています。また、テレビには所謂離島ものというのか、NHKの朝のテレビ小説の「ちゅらさん」をはじめ、先程引用した「ドクターコトー診療所」、最近のものでは「瑠璃の島」などのドラマが数多く放送されています。もちろん航空会社の機内誌や旅行誌は、自社便のセールスや雑誌の販売増のために投稿や記事を載せているのであり、テレビドラマは、離島ものは数字が取れるとの判断からの後追い企画であることは明白です。しかしながら、機内誌や旅行誌、テレビ画面からでも離島のすばらしさ、魅力が伝わってくることは、これまた紛れもない事実です。旅行誌の記事の編集者も現地に取材して、テレビドラマのスタッフ関係者も離島に滞在して、そのことを実感しているからこそ私達にすばらしさが伝わってくるのではないでしょうか。
 しかるべきポジションで責任ある仕事をしている女性、いや女性に限らず社会進出している人々は、日々の仕事の中や生活の中で自分達が意識している以上に人間力を低下させています。特に都会の生活はそれ自体が、人間力を低下させています。そうした人々がひとたび離島を訪れると、離島の持つ不思議な力の作用によって人間力が回復されるのです。つきなみな言葉でいえば、癒されるということです。

 このESSAYをお読みの皆さま、今年は一度沖縄の離島を訪れてその不思議な力に触れてみてください。皆さんが考えている以上にご自分の人間力が低下して(磨り減って)いることに気がつかれると同時に、離島の持つ不思議な力が人間力を回復させることを実感できるはずです。