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第344話 ぶん殴ってやりたいやつ
最近聞いた二つの出来ごと
今回の出だしは、あまり穏やかな表現ではなくて申し訳ありません。
知り合いが遭遇した話です。相手側に一時停止のある、見通しの悪い交差点でのことです。彼のクルマには一時停止義務はありませんでしたが、万が一自転車や歩行者が来たらやだと思い止まれるほどのスピードで交差点に侵入しました。その時1台の自転車が結構なスピードでギリギリのところを横切りました。双方ともに急ブレーキをかけたのはいうまでもありません。彼は窓を開けて思わずバカヤローと言おうとしました。その時です。
小太りのおばさんが、「気をつけなさいよ!!!」と一瞬早く怒鳴ったそうです。明らかに一時停止をしなくてはならないのは自転車の方です。彼は、自転車がおばさんでなかったら、ぶん殴っていたと私に話したときも興奮していました。
次は同じ彼が、細い道で対向車とすれ違ったその時のことです。電信柱もあって2台の車がすれ違うのにかなり気を遣う、そんな道だったそうです。小型の国産車が向こうからやってきて、その車の左側に少し余裕あるような感じで止まってしまったというのです。もう少し左に寄ってくれたら楽にすれ違えるのにと思いながら、彼は自分が動いてすれ違えということだなと理解しました。小型車の運転席にはおばさんが座っていました。自分の側に電柱あるのはわかっていましたが、丁寧にゆっくりと動きはじめて目一杯左に寄ったそうです。その時、相手の車のミラーと自分のミラーが接触しそうになりました。自分のミラーをたたんで、そのことに気を取られていた間に、一瞬のクリーピングでクルマが動きました。ザザッと左後のホイールアーチ上をこすってしまいました。彼は窓を開けて、相手にミラーをたたんでくれるように言おうとしました。その時です。
運転席のおばさんが言いました、「若いわねえ〜」。彼は私に言いました、「その時僕には明確な殺意があった」と。
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