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第346話 ボーダーライン-1
NHKのドラマ、ボーダーラインを見ました?
昨年の後半、NHK総合で消防救急隊員のドラマが放送されました。ご覧になった方も多いと思いますが、小池徹平さん、藤原紀香さん主演の消防救急活動を舞台としたものでした。
警察ドラマのリアル感の無さ、嘘っぽさはまあ周知の事実だと思いますが、この手の消防ドラマは数が少ないこともありますが、かなり現実に近いと認識されているのではないでしょうか。特に消防隊員の訓練などを取り上げたドキュメンタリーなど見ていると、よりそう実感されるのではないでしょうか。
では実際はどうなのでしょうか。前話で自宅が類焼した話をしましたが、その時の経験をお話したいと思います。
それはもうすぐ一年になりますが、冬の寒い午前一時半を少し回った頃でした。玄関をドンドンと叩く音で目が覚めました。その違和感から、反射的に窓の外を、カーテンを少し開けて見ました。隣家の一階の窓から赤い炎がちょろちょろとしているのが見えました。一瞬で火事だと思いました。飛び起きて一階に降りて玄関のドンドンに応えようと思いました。階段を下りて、いやもう誰かがしているかもしれないがとの考えがよぎりましたが、119番が先だと思い直して居間の電話で119番をしました。
電話口で、消防でしょうか救急でしょうかとの声が妙にまどろっこしくて、思わず、火事だすぐに来てくれときつい口調で言い、住所はと問われ、○○区○○、○の○の○一軒家と早口で言いました。電話口の向こうからすぐ避難してくれというようなことを言われ、わかった、とにかくすぐ来てくれと言って電話を切りました。その後、お礼を言おうと玄関に出てみましたがもう誰もいませんでした。ただ、声から斜め向かいの奥さんだと理解できていました。
電話が終わって、さてこれからどうするかと考えていました。そうだ、まず着るものと携帯などの当座必要なものをもって出ようと思いました。二階の寝室に戻って、携帯や衣服など必要なものをかき集めて、一階に戻る途中で、階段途中のガラス窓がみしっみっしという音と共にヒビが入るの見えていよいよ来るなと身構えました。
外に出ました。消防車が来てあたり一面水浸しになったら着替える場所がなくなると思い、まず服を着ようと道路に座ってパジャマの上からズボン、フリース、ダウンジャケット、そして靴下と靴を履きました。
全て終わってもまだ消防車の来る気配はしませんでした。そこで、そうだ少しでも火を消そうと思い、いつも洗車に使っている水道ホースの先端を一番強力な水勢になるようにして消火を試みました。水はいつものように勢いよく出ました。しかし、火災には全く無力であることがすぐに理解できました。焼け石に水とはこのことだなと思いました。後になって思ってみると、この時、自分の家の方にじゃんじゃん水をかけておくことは無駄ではなかったのではないか、特に火が入った軒天換気口の周辺と隣家に一番近いところの壁に水をかけておくことは、全くの無意味ではなかったのではないかと感じました。
この時になってもまだ消防車の来る気配はありませんでした。もう来るだろうと思いながら、それまではと思い、持ち出したものの中から携帯を取り出し、こんなことでいいのかと思いながら写真を撮りました。二枚目をとったところで、遠くからサイレンの音が聞こえ、すぐにその音が大きなりました。通報から消防車の到着まで、時計を見ていなかったので正確なことはわかりませんが、5分以上10分以内だと感じました。
続く
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