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ナローポルシェや、M-HOUSEをとりまく色々な事柄を綴った不定期更新のエッセイです
第348話 ボーダーライン-3
NHKのドラマ、ボーダーラインを見ました?

 我が家は見た目以上に損傷しました。家の中じゅう水浸しでした。こげた匂いが、それを嗅いでいると頭が痛くなってきました。  鎮火当日の朝から、テレビや新聞社がたくさん来ていました。どうやらお隣のご夫婦は亡くなられたようでした。私がテレビに出ていたと我が家の保険代理店の人が電話をしてきました。10時前あたりから、隣家の現場検証が始まりました、消防、警察と二度に渡って行われました。我が家も二度行われました。現場検証は午後も続いていました。警察は事件性を疑っているようでした。ただ、隣家の私には何の情報も入ってきませんでした。夕方になって後片付けをしてくれる業者の方が来てくれて、一番燃えた部屋の残骸を外に放り投げていたら、警察から振動で検証中の家が崩れるからやめてくれときつく言われ、そろりそろりとした後片付けになって、はかが行かなくなりました。その後警察の検証は、何日間か続きました。
 隣家の亡くなられた老夫婦の親族の方がいたので、塀越しに二三言葉を交わすと、今はこんな状態なので改めてご挨拶に伺うと言っていました。私もそうだと思いました。
 午後になって、奥さんも娘のところから戻って来ました。いろいろなものが同時進行していた夕方に、あまりにも臭うのでまだくすぶっているのではないかと疑い、消防署に電話をしました。すると、これからサイレンを鳴らさないで消防車を出しますと言われ、しばらくして1台のポンプ車がやって来ました。最近は現場に出ていないと思える方たちが5人くらいやって来ました。手には何やらスピードガンのようなものを持っていました。それは、壁や隠れている裏側の温度を一瞬で測る、ハンディータイプの壁裏探査装置のようなものでした。そして家の中じゅう、いろいろ測り漏れのないよう細かく見てもらいました。消防の方たちが測って次に移動をするとき、その周辺をさらに広範囲にちょっとしつこくお願いしました。結果、どの地点も20度以下で問題ありませんでした。消防の方たちも、くすぶっていたら100度以上数百度はあるからと言っていました。私は彼らの話ぶりからも、プロの方たちに来てもらって見てもらって良かったこれで不安解消と思い、これで今夜も安心ですねと同意を求める感じで尋ねました。もちろんもう大丈夫ですよという応えを期待してです。
 ところが5人の中の一人が言ったことは、はるかに意外なものでした。彼が言ったのは、何と『今のところは』でした。確かに、先のことは何とも言えないかも知れませんが、念のために来てもらい、家じゅうを見てもらい、5人の誰ひとりとして問題ないねという感じでチェックをしていて、最後に責任は持てないといった感じで『今のところは』はないでしょう。あまりにお役所的で、被害者被災者に寄り添えとまでは言いませんが、気持ちを逆撫でするような言い方は避けるべきではないかと感じました。せめて、『現在は問題になるようなところはありません』ぐらいは言ってもらいたかったと思いました。
 長くなるので、この先は簡単にしますが、後片付け、消防署での罹災証明の取得、区役所での各種の減免の取り扱いの可否、自分の火災保険会社とのやり取り(現場チェックと見積もり査定)、建設会社との打ち合わせなどなどまあ大変でした。どれをとっても、ちょっとでも要件から外れる、満たしていないと適用にならず、特に噴飯ものだったのが固定資産税住民税で、支払い済みのものは減免の対象にならないということでした。まあ一括もしくは先払いをした支払いを済ませてしまった方は、残念ですが対象外ですということでした。
 家の補修改修も消費税値上げ前駆け込み需要のあおりで、実際の工事着工は4月以降の駆け込みの工事が一段落してからになってしまいました。実際の補修改修工事は、ほぼ建て替えに等しいものでした。
 そして今回一番ひどいと思ったことは、隣家の遺族相続者の方達が火災当日の朝に後日伺うと言って、それっきり一度も来なかったことです。何の連絡もないので、隣家の解体工事の業者さんに依頼者の連絡先を聞いて電話をしました。するとその人曰く、私たちも何十年も音信がない親戚のことで大変迷惑をしている、年寄りたちは皆もう田舎に帰っているので出てこられない、私は相続人ではないし忙しいので行くことができない、さらに火事は補償しなくていいと聞いているので何か言われても困ると。その人も解体工事を依頼している関係者の一人には違いないのに、自分は無関係なので仕事中に電話をしないでくれとまで言われました。その後、土地は相続され不動産業者に転売されました。うちはその業者から知りました。そして隣家のご主人は損保ジャパンの保険代理店をしていて、うちも勧められたことがありましたので、そのことをうちの保険屋さんに伝えましいた。詳しくは触れませんが、その保険屋さんがいろいろ調べてくれた結果、ごく丁寧に言って、あまりに損保ジャパンは不誠実だと言っていました。
 話が少しそれますが私も損保ジャパンには何度も嫌な思いをしてきました。自動車保険でもお客さんのクルマの板金塗装修理で保険会社が損保ジャパンのときは、原則断ることにしています。まずスムーズにはいきませんから。
 家の補修改修も昨年の11月初めには終了して越せるようになりました。ボーダーラインはそんな時期に見ました。あまりの落差にエッセイの表題にしました。年も改まり、元の生活に戻るのがいいのか、現在住んでいるところにこのまま住むか思案中です。いずれにしても、今年はいっぱいいいことがあればなあと思っています。
                  3話終了




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