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ナローポルシェや、M-HOUSEをとりまく色々な事柄を綴った不定期更新のエッセイです
第44話 またBMWを買いそうになりました
M-HOUSEのS代表の場合-2

M-HOUSEのS代表、お客さんとこんなことを話していました。
お客さんのNさんが、
「SさんまたBM買ったんだって?、ボクも旧いBM買おうかな」
S代表、
「またそんなこといって、旧いBMって何がほしいのですか?」
と聞くと、
「02がいいな、後ろは角テールでも丸テールでもどっちでもいいから。それかE30の320の5速のミッションのやつ」
とNさんがいいました。するとS代表が、
「先週観てきましたよ、88の320の5速」
といいました。Nさん、
「えっ、何でいってくれなかったのよ。声かけてくれれば一緒にいったのに」
と全く訳のわからないことをいいました。
「Nさん、ボクが自分で乗ろうかと思って行ってきたんですが、勿論相手にはクルマ屋ですと断ってですよ。一緒には行けませんよ」
Nさんが、
「どうして一緒に行ったらいけないの?」
S代表その問いは無視して、
「その時の話しをしましょう」
Nさんも、どうして一緒に行けないのかはそれ以上は聞かず、
「88くらいのBMってどんな感じか聞きたいな」
といいました。S代表は、
「去年買った例のE28のBMで行ったんですけど」
と話しはじめました

「はじめまして、M-HOUSEのSです。早速ですが、拝見させていただきます」
320のオーナー、そのクルマを示しながらいいました。
「どうぞどうぞ、じっくり観てください。年式の割にはかなりいいと思います」
S代表、ボンネットを開けてちらっとヒンジ金具の錆に目をやりながら、
「これいつ頃お買いになりました?」
320のオーナー、
「1年少し前です」
S代表、
「まだ1年ちょっとなのに、どうしてお売りになるのですか?」
320のオーナー、
「子供がまだ小さいので、女房が2ドアじゃ不便だってうるさいのと車検なので」
S代表、室内を見ながら、
「そうですか。ところでこのクルマ遅くないですか?」
とたずねると、
「そうなんです思ったより、全然遅いんですよね。BMのミッションなんでもっと速いと思っていました」
S代表、
「そうですよね、スピードにのって百2、30出れば十分速いですけどね」
320のオーナー、
「全くその通りです」
ひと通り拝見し終えて、S代表が価格のことをたずねました。
「このクルマいくらぐらいをお考えですか」
320のオーナー、ちょっと間をおいて、
「○十万円でお願いできればと思っています」
といわれました。その金額を聞いて、S代表、
「正直ちょっとその金額では難しいです」
というと、話題を逸らすかのように320のオーナーはS代表の乗ってきたE28に近づいて、
「これ程度いいですよねー、すっごくきれいですね、レストアしたのですか?」
とたずねました。
「内装はいっさい手を付けていません。外は、ボンネットを塗ったり、シールラバーを交換しています。機械的にはいろいろやらざるを得ませんでしたけど」
320のオーナーがたずねました。
「どこをやったんですか?」
「このクルマ、ボクで3オーナーに近いんですがかなりやらざるを得ませんでしたね」
320のオーナー、
「ボクも参考にしたいので教えてくれますか」
「いいですよ、やったところ簡単にお話しましょう。ブレーキは全部です。ローター、パッド、ホース、マスターは交換、キャリパーはO/Hです。サスはスプリングのノーマル戻しとショック交換。エンジン、ミッションマウントの交換。ドライブシャフトの片側交換、ラバーカップリングジョイントの全数交換、エンジンオイルATオイルの交換、タイミングベルトの交換、タペット調整、デスビ、ローター等の電装品交換、タイア、ホイール4本交換などなどですね」
320のオーナー、
「こんな程度いいのにそんなやらなくてはダメだったんですか?」
「4、5年の間ほとんど整備を受けていませんでしたから」
320のオーナー、
「そんなにしないとダメですか。ところでそれでいくらくらいですか?」
「いくらくらいだと思いますか?」
と逆にS代表がたずねると、320のオーナー、
「機械部分でないボンネットの塗装を除いて、60万円くらいですか?」
というのをいうのを聞いて、S代表が逆に、
「どうして60万円くらいだと思われるのですか?」
と聞きました。
「自分のクルマも、このE28も漠然とですが直すとそのくらいかなと思ったものですから」
そう聞いて、S代表はちょっと困った顔をして、
「塗装外装も入れて全部で190万円です」
というと、
「えー、そんなにかかるんですか、ほんとですか、ちょっと信じられないのですが」
と驚きの声でした。S代表は320に近づいて、
「このクルマの方が、冷静に見てE28よりくたびれていますから、金額的には余分にかかりますよ」
320のオーナーから声はありませんでした。
結局商談はまとまらず、お互いありがとうございましたと別れました。

現場の再現シーンを話し終えたら、Nさんが、
「88くらいのBMって、ヤフ−とか見ていると2、30万円でているものもあるので、50万円もトータルで出せば乗れるのかと思っていた」
と気軽にいうとS代表は、
「Nさんのように、クルマは完璧じゃなくちゃやだとか、ハンドルがテカっているのは貧乏くさいというような方が満足して乗るにはそんな金額じゃとても無理です」
「ふーん、ところでSさんほんとにまたBM買おうと思ったの?もう1台」
とNさんグサッとくる質問をしてきました。
「勿論本気ですよ」
と答えるとNさん、
「ボクも相当だけど、Sさんもほんとしょうもないね」
と呆れたようにいいました。すかさず、
「だから、ボクはS代表なんです」
一瞬ちょっと間があって、Nさん、
「はははははは、SさんのSはしょうもないのSなんだ」
S代表、
「Nさんもですよ!!!」。


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