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ナローポルシェや、M-HOUSEをとりまく色々な事柄を綴った不定期更新のエッセイです
第48話 映画の中のポルシェ-3
「スパイゲーム」のグリーンのナローは何?(後編)

前話の最後で申し上げた、『年式の根拠』と『衝撃的な事実?』についてお話します。
映画「スパイゲーム」に登場するナローは68年のSWBが基本だとお話しましたが、その根拠からいきましょう。SWBだというのは画面からすぐわかります、三角窓が開閉式になっていますから。では64年から68年まであるSWBの中でどうして68年だといえるのか。ちょっとポルシェ、ナローに詳しい方ならワイパーが黒で左停止だからというかも知れません。しかし、それは簡単に変更できることですし、シルバーの塗装仕上げのワイパーブレード、アームが非常に入手困難な現在の状況では黒いものに交換する方が自然です。67年までは運転席と反対側でワイパーが停止することを知らない人や運転席停止がカッコいいと左右逆に直してしまう人がいるので残念ながらこれらも根拠になりません。ちなみにポルシェAG発行のカレンダーの中に登場するポルシェ所蔵の65年911も左停止(左ハンドル)になっています。(残念!!)
話はちょっとそれますが、この映画に出てくる68年になくて、アメリカ(北米)仕様の68年に後付けされているものがあります。それは前後に取付られた車幅を表すマーカーです。アメリカの法律が変わってこの年から義務付けられました。国産車の北米向け輸出車等にもついていたので何らかの形で目にされた方もいるかも知れません。しかしこの映画に出てくるクルマにはこれがありません。クルマをマーカー無しに加工(直した)かCGで消した、もしくはヨーロッパ仕様であったと考えることが出来ます。
余談ついでにもうひとつ、ポルシェは69年式から前後のウインカーユニット及びレンズを変更します。この新しいウインカーユニットレンズにはマーカーがビルトインされているので、このマーカー外付けは68年式のみということになります。アメリカ仕様68年式を見分けるひとつのポイントなので覚えておかれるといいと思います。
話を本題に戻すと、68年のSWBだという決定的な根拠は、三角窓の開閉用ノブの形状です。これが決定打です。
次に「衝撃的な事実?」についてです。このクルマは何回も映画に出てきます。ハンドルが市販の汎用品のもので巻直されているので、そこを見ていくと皆同じクルマだということわかります。ここから先の話の根拠の決定打は画面からは得られないのですが、クルマの佇まい、挙動からどうしても『912』だという感じが拭えないのです。私はほぼ間違いないのではないかと思いますが、どなたか決定打をお持ちの方おられたら教えてください。以前この話をした時に、『音』は6発だよといった人がいましたが、前話で映画の中ではロバートレッドフォードが運転しているが、実はしていないと申し上げました。音も全く同じであとで入れたものであり何の根拠にもなりません。
アメリカで以前、この映画に使われたナローだというクルマの写真を見せられたことがあるのですが、それは6気筒だったように思います。アメリカのオークションサイトに映画で使われたクルマとして出品されていたという話を聞きました。しかし、そのクルマがほんとに映画のクルマと同じだったとは今は思えません。それは外側だけグリーンに塗った元色白の実にボロいクルマでした。ただ、いかにも白いクルマを映画用に写るところだけグリーンに塗ったというクルマだったので100%否定する根拠はありません。

ニ話にわたって、「スパイゲーム」のグリーンのナローは何?、についてお話ししてみました。
まあ考えてみると、映画、映像は錯覚の世界、別の言い方をすれば騙しの世界です。そこを明らかにするには、解明する側にかなりの力量が必要だと感じました。


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