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ナローポルシェや、M-HOUSEをとりまく色々な事柄を綴った不定期更新のエッセイです
第55話 ポルシェな人々 その29
ポルシェにまつわる様々な人々の、本人にとっては誠に真剣な、はたから見ていると実に楽しい愉快な生態をシリーズでお話ししましょう。

今時のポルシェ純正パーツは困りもの

先日こんなことがありました。以前お問い合わせ頂いた(とご本人は仰っていました)という方から電話がありました。

お客さま「以前フロントのウインカーユニットのことで問い合わせしたものです」
Mハウス「はい、どんなことでしょうか?」
お客さま「以前お聞きした時、当時ものの新品はすごく高かったのでやめたのですが、新品が手に入ったので取付けてもらえますか」
Mハウス「はい、ただちょっとお聞きしたいのですがその手に入ったものは当時ものですか?それとも今ポルシェから手に入るものですか?」
お客さま「純正です」
Mハウス「はい、純正だと思いますが、今ポルシェが造っているものかどうかをお聞きしたいのです」
お客さま「たぶん今手に入るものだと思います」
Mハウス「そうですか、それはちょっとご勘弁いただけますか」
お客さま「どうしてですか?お宅で買わなかったからですか?」
Mハウス「そうではなくてそれを取り付けるのは実に大変だからです。下手をすると割れちゃう恐れがあるからです」
お客さま「だって純正ですよ?」
Mハウス「それはわかっているのですが。最近それと同じものを付けたのです。そのお客さまもやはりうちの当時ものは高いと仰って純正を取ったのです。でもそれ、お持ちのと同じですが、材質が違うのと、形が違うんです。無理矢理閉め込むと割れちゃうんです。それプラスチックで出来ているので」
お客さま「純正なのにですか?」
Mハウス「造っているところが昔のところと違うんです。こういうことはどこのメーカーでも最近はあります。ただ、Mハウスではそういうのは使わないですし、残念ですが、はなから純正だと思っていません。この間付けた時ももう大変で、割ってしまったらうちの責任ですし、仕上がりは昔の部品のようにキチンとなかなか付かないしで、当時ものと遜色ないような取付け見栄えのレベルにするまでそれはそれは時間がかかったので正直もうやりたくないのです」
お客さま「純正でしかも日本で買うより安かったからアメリカから買ったのですが、それでも結構したんですが」
Mハウス「それはわかります。しかしもしもヒビを入れてしまってごめんなさいという訳にはいかないでしょう」
お客さま「それはそうです」
Mハウス「正直勘弁していただきたい」
お客さま「そうですか、ところでMハウスさんでは今後どうされるのですか?」
Mハウス「うちですか、当時ものの在庫のあるうちはそれを使います。それが無くなったら違うことを考えます」
お客さま「あと何セットくらいあるのですか?」
Mハウス「5セットくらいだと思います」
お客さま「それをはじめから買っておけば良かったな」
Mハウス「それは仕方がないですよ。その時はうちのが金額が高いと思われて他所で手当てをしようと考えられた訳ですし、実際ポルシェから来たものを手に入れられた訳ですから」
お客さま「Mハウスは高いからなあ」
Mハウス「確かにそういう感じがするかも知れませんが、うちのやり方が結局安くつくはずなんです。もともと私がユ−ザ−の立場から始めたショップですから」
お客さま「でもそうかもしれないな」
Mハウス「そのことを多くの方に理解していただけるようにしているつもりですがなかなか」
お客さま「最初から当時もの買っておけばよかった」
Mハウス「今ポルシェから買えるもので、昔の部品と形、材質が違うものはもっとありますから」
お客さま「そういうのはどうするんですか?」
Mハウス「先程もいいましたが、そういうパーツは使いません。在庫の当時ものを使うか当時もののパーツを捜します」
お客さま「そうですか」
Mハウス「ポルシェから来たものは純正というのですが、多くの方が、『純正=何の問題もなく付く』と思っていますが実はそうではないのが厄介なことです」
お客さま「どっかの雑誌でそんな特集してくれたらいいんですけどね」
Mハウス「そういう企画があれば協力させていただきますが、そんなことをいってくるところはありません」
お客さま「そうですか、ありがとうございました」

最後にもっと厄介なパーツの例をひとつ。それはメッキのホーングリル(〜72年までより正確には71年)です。これは3次元的に形が違うので上下左右オリジナルのようにちゃんとつけることは不可能です。以前バックオーダーになっていたものが、ポルシェから入荷したとの連絡をもらった時は小躍りしましたが、取付けたらまったくといっていいほど付きませんでした。元に戻すのも、ボディー側をいじってしまったのでなかなか元通りにならず大騒ぎでした。ほんとガックリときました。M-HOUSEは純正主義ですが、より正確にいうと当時もの純正主義です。


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