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第57話 希少なクルマを買うということの究極の責任
時々世のポルシェ好きの多くが知っている、雑誌に出ていた、あるいは有名なコレクションに所蔵されていたといった希少なポルシェの近況や売買情報が入ってきます。もしくは、消息が伝わってきます。
そんな中で三和もののほんとすばらしいコンディションのナローの消息が届きました。このクルマが皆さんに特定できるような詳細はここでは申し上げられないのですが、私はこのクルマをかなり以前から知っていました。
はじめてこのクルマを見た時、だいぶ昔だったので私自身経験が少なかったこともあって、こういうクルマが世の中にはあるんだと大感激をしたことを覚えています。外装はいうに及ばず、内装も完全なオリジナルでした。現在の私から見てもベスト5くらいにランクできるすばらしいナローでした。オーナーもオリジナル完璧主義のよく勉強されていた方でした。この方とはいろいろとナローについて話をしました。当時の私の知っている限りの知識をお話しました。今でも文化的遺産だと思いますが、当時もそうオーナーに申し上げて大切にされるよう伝え、その方もわかっていますので大切にしますとおっしゃっていました。
最近そのナローの姿を見ました。外観こそ特別変わった様子はありませんでしたが、エンジンとミッションが全く違うものに載せ換えられていました。それを収めるために、外からはわかりませんが、ボディーの一部が切り取られていました。思わず『うっ』といってしまうような衝撃でした。
それからしばらくして、高名なそして懇意にさせていただいている自動車ジャーナリストの方とお話しました。そこで、ポルシェミュージアム(日本)にあったクルマの行方など貴重なお話を伺いました。そこで話し合ったことは、希少、貴重なクルマを所有するということは、手放す時まで責任がある、そのクルマの将来にまで思いを馳せなくてはいけないということでした。
この時ある方からいただいた言葉を思い出しました。
「ある骨董のEXPERTの言葉ですが、骨董品を持つと言うこと、『と言うより一時期それを預らせてもらうこと』、は生活の中でそのものの中にある品格に触れ、それによって人生の目的である己の品格を高めることである。」
多くのすばらしい状態のクルマを所有している皆様にお願いがあります。よく一生持っている、絶対売らないといいます。しかし、お持ちのクルマを手放す時は必ずやってきます。その際の状況は千差万別でしょうが、その愛しいクルマの行く末を日頃から心掛けておいてください。決して私が最近見たナローのようなことが、起こらないようにお願いいたします。
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