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ナローポルシェや、M-HOUSEをとりまく色々な事柄を綴った不定期更新のエッセイです
第72話 ポルシェな人々 その42
ポルシェにまつわる様々な人々の、本人にとっては誠に真剣な、はたから見ていると実に楽しい愉快な生態をシリーズでお話ししましょう。

最近いただいた電話から

少し前にこんなお電話をいただきました。
相手方
「ちょっとお聞きしたいのですがよろしいでしょうか?」

「はい、お答え出来ることでしたら」
相手方
「71年の2.2のSに乗っているですが、どうも変なんです。後ろのマーチにクラクションを鳴らされる位加速しないんです。あと、オイルがぽたぽた漏れてくるのと、ヒーターを入れると車内が真っ白になるくらいオイルの焼けた煙りが充満してしまうのですが何が原因なのでしょうか?クルマのことはよくわからないのでお電話しました。」

「はい、おクルマは最近お買いになったのですか?」
相手方
「はい、あるショップから買いました。買う時にエンジンは上も下もオーバーホールしてあるので問題ありません。基本的にはみんな見てありますので当面何かすることはありませんと言われたのですが」

「おクルマを拝見しないとなんとも言えませんが、きちんとオーバーホールしてあればオイルがぽたぽた漏れるようなことはないはずですし、車内がオイルの煙りで充満すると言うこともないです。71Sならきちんと修理調整してあれば200Km以上出るクルマですし、加速も現在の交通状況をリードすることがあっても、クラクションを鳴らされるようなことはないです。」


〜中略〜


相手方
「一度見ていただくにしても、私は遠方なので難しいのと、知り合いの話からどうもM-HOUSEさんは敷き居が高くて」

「よくそんなことを言われるのですが、うちにお越しになっている方々は皆、私の目から見てもすばらしいナローにお乗りですし、皆さん喜々としておられますよ。まあ、こうしてお電話をいただいている訳ですし、機会がありましたらお越し下さい。」
相手方
「またご連絡します」

簡単に再現するとこんな内容でした。
電話の後に感じたことは、第一にこの手の電話多いなあ、第二にどうしてわからないことに平気で手を出せるのかなあと言うことでした。

先日読んだ新聞に、どんなものでも多くの中から何かを選択する場合、品質が同様なら素人でも手を出せるが、品質が一様でないものはその違いを見抜けるプロしか手を出せない。市場を拡大するためには素人でも買えるように商品の品質を同じにしなければならないというのがありました。
クルマで言えば新車はどれも均一ですからだれでも買えるけれども、中古車は品質が千差万別だから素人が手を出すのにリスクがあると言うことです。だから、多くのメーカーが認定中古車と言うものを設定してだれでも不安なく買えるようにして中古車市場の維持拡大に努めている訳です。
それをナローで見てみると、もう年月が経ち過ぎて認定中古車と言うものは存在せず(やろうとすれば出来るがそれをすると一般的には信じられない金額になるので私の知る限り一カ所を除いてだれもやらない)、本来なら品質が一様でないものはその違いを見抜けるプロしか手を出せない領域なのです。しかし、欲しい人が現在も存在するために個人間売買やネットオークションが行われ、ポルシェショップの店頭にはナローが並んでいます。
冒頭の電話に戻ると、お電話をいただいた方は、そのリスク回避の方法としてショップから買えば間違いないだろうと考えたと推察します。ただ、これと同様の話は以前のエッセイでも取り上げていますし、電話もよくあります。と言うことは、ショップから買うと言うことだけでは必ずしもリスク回避にならないと言うことです。ショップを見極める作業が必要だと言うことです。その選択基準として『敷き居が高い』と言うのは、かなり重要なポイントだと思います。例えてみれば、それは、口は悪いし愛想はないが腕のいい板前さんがやっている寿司屋のようなもので、訪ねるまでは勇気がいるが食べてみたら期待以上のおいしさで来てよかったと言ったものです。
ただここで申し上げておかなくてはならないのは、ショップ側でこれで十分と考えていることが、買われた方の思いと一致しないと言うことから問題が生ずることもあることです。まあ、そう言った相違は金額に現われているとも思いますが。
最近は世の中全般に言えることですが、お店は綺麗になり、スタッフは愛想がよく、ウィンドーショッピングの人でもお客さまとして扱ってもらうのが当り前のようになっています。しかし私の経験では、愛想がよくて値段が安いところに本物があったということはまずありません。どちらかと言うと、慇懃で高いか、無愛想で高い(もしくは安い)ところに本物があるように思えます。
世間一般的ではない特殊と言っていいものに素人(一般の方)が手を出す場合は、プロ並みの見抜く力を身に付けるか、十分なお金を武器にするか、敷き居は高いが評価の定まったところから買うしか方法はありません。


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