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第83話 ポルシェの特異性に関する考察ー2
ポルシェはVWの大株主
ご存知の方も多いと思いますがポルシェはVWの大株主、20%を所有しています。このことにあまり多くの方は違和感を覚えないようですが、会社の規模がはるかに小さいポルシェAGがVWの株式の20%を購入出来た、購入できる資金があった(購入の理由は純経済的なものだけではないといわれていますが今回はそのことには触れません)ということからある事が透けて見えます。それはポルシェは儲かっている、もしくは儲けているという事実です。
日経だったと思いますが、先日自動車メーカーの売上純利益率というのが出ていました。覚えているところを上げてみると、
ルノー7.9%(日産からの配当の寄与が大きい)
BMW6.9%
トヨタ6.5%
メルセデスと日産がこれ以下だったと記憶しています。では、ポルシェは何%だと思いますか?それは業界トップの11.9%です。今や、自動車業界でのクルマ造りはトヨタのように造らなければ利益が出ないというのが常識ですが、ポルシェも1980年代の終わりからトヨタを退職した日本人を雇って生産の効率化を図ってきたことは良く知られています。 トヨタ6.5%に対してBMW6.9%は納得のいく数字です。これは本家本元ほど効率的に低コストで生産出来なくても、ブランド力で高く売ることが出来ることを示しています。
ではポルシェの11.9%をどう解釈しますか?、どう考えてもポルシェは儲かっている、もしくは儲けているということでしょう。1968年当時のアメリカでの価格は911S(1969年モデル)で約8000ドル弱(オプションによって違いがあるとしても)、カローラは約1000ドル(一番安いのは$1000以下)でした。この比率は現在でも大きくは変わっていないはずです。1:8が1:7、1:6くらいにはなっているかもしれませんが。
ちなみに1968年と2006年の日本におけるポルシェとカローラの価格を見ると、
1968年 911S 510万円 カローラDx49.5万円 10.3倍
2006年 997Carrera(6速)1082万円 カローラ1500X140.7万円 7.7倍
この数字の見方はいろいろとあると思いますが。
さて、前述したように同じ方式でのクルマ造りをしているポルシェと他車との原価的差は昔ほどないのは明らかです。あるポルシェ関係者によると、911カレラ(997)で200万円から300万円位だろうとのことでした。カローラだって50万円で出来るとは思えないので、やはり原価的には差が小さくなっていると いえます。
そこを最大限利用しているのが、今のポルシェだと思います。ざっくりと言えば、製造原価は大きく低下しているのに、昔の価格で売っているだから利益率が高い。高品質で高価というイメージで商売が出来る希有(特異)なメーカーだということです。もちろんそれを可能にしているのは、他ならぬお客さまな訳ですが。トヨタはその美味しいところを何とかうちもモノにしたいとはじめたのが、「レクサス」です。私は詳しく調べたことはありませんが、同じ車台のクルマで、200万円くらい違うのではないでしょうか。
生まれながらに高品質、高価格のイメージで商売の出来るポルシェは、エルメスのバッグのようであり、パテックの時計のようであります。ポルシェより少量な生産規模なら他にもあると思いますが、現在のポルシェの生産規模でこれだけの高付加価値を享受出来るところは他にはないのではないでしょうか。
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